亜鉛欠乏症👍
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亜鉛欠乏症
検査と治療
横浜市金沢区 六浦皮ふ科

皮膚・毛髪の機能を正常に保つために


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亜鉛欠乏症とは

亜鉛は体内の約300種類以上の酵素の構成要素であり、細胞分裂、免疫機能の維持、皮膚・毛髪の生成、そして味覚を正常に保つために必須の微量ミネラルです。

亜鉛不足から、「皮膚の不調」「抜け毛」「疲れやすさ」などの症状がおこりやすくなり、また、皮膚疾患が治りづらい場合はその原因の1つにもなります。
亜鉛欠乏の症状が顕在化しない場合も含め、少なくとも10~30%の日本人が亜鉛欠乏状態にあると予想されています。

六浦皮ふ科では、数年前から皮膚疾患に強く影響する亜鉛欠乏症に着目しており、脱毛や皮膚炎の治療と並行し亜鉛欠乏症の治療を行ってきました。
皮膚症状と全身症状の両方を踏まえ、皮膚疾患を単なる局所的な問題として終わらせず、日本臨床栄養学会の診療指針に基づいた内科的な視点からアプローチし、安全な亜鉛補充療法を提供しています。


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亜鉛、ALP、銅、貧血の相互関係について

これらの要素は、体内のミネラルバランスと酵素機能を通じて深く関わり合っています。

1. 亜鉛とALPの関係
• ALPは亜鉛依存性の酵素: ALPは、骨、肝臓、腎臓などに存在する酵素で、細胞の成長や骨の形成に関わっています。この酵素が正常に機能するためには、亜鉛が必須(補酵素)です。
• 欠乏症の指標: 亜鉛が不足すると、ALPの合成や活性が低下するため、血液中のALP値も低下します。そのため、血清亜鉛値だけでなくALP値も、亜鉛欠乏症の早期診断や治療効果の指標として利用されます。

2. 亜鉛と銅の関係:拮抗作用と副作用リスク
• 競合する吸収経路: 亜鉛と銅は、消化管内での吸収経路が競合する関係(拮抗作用)にあります。
• 治療上の注意点: 亜鉛欠乏症の治療で亜鉛製剤を過剰に、または長期間にわたって投与すると、銅の吸収が強く阻害され、二次的な銅欠乏症を引き起こす可能性があります。
• 銅欠乏症の症状: 銅が欠乏すると、貧血や好中球減少症、神経障害などを引き起こします。そのため、亜鉛製剤を長期的に使用する場合は、定期的に銅の血液検査も行うことが望ましいとされています。

3. 亜鉛と貧血の関係
• 鉄の代謝への関与: 亜鉛は、体内で鉄を適切に利用するための代謝酵素の働きを助けています。
• 影響: 亜鉛が欠乏すると、体内に鉄があってもそれをうまく活用できなくなり、鉄欠乏性貧血を引き起こしたり、悪化させたりする原因の一つとなります。

4. 銅と貧血の関係
• 鉄の運搬に必要な銅: 銅は、鉄を全身に運ぶタンパク質(セルロプラスミン)の合成に必須です。
• 影響: 銅が不足すると、鉄がうまく運搬されずに利用できなくなり、結果として貧血(特に小球性低色素性貧血)を引き起こします。

六浦皮ふ科の治療実績

当院では、皮膚疾患がある亜鉛欠乏症の患者様の治療を行ってきました。

治療患者数(亜鉛補充療法を行った方)

  • 2023年 73名
  • 2024年 51名
  • 2025年 48名

亜鉛欠乏症:主な症状と生活習慣

亜鉛欠乏症は、「摂取量の減少」「吸収の低下」「体外への排泄の増加」の3つのメカニズムによって引き起こされます。

以下のチェックリストは、亜鉛欠乏のリスクが高いとされる症状と生活習慣です。
AとBにそれぞれ1項目以上に当てはまる方は、亜鉛欠乏症の可能性が高いと考えます。

【亜鉛欠乏症チェックリスト】

A. 自覚症状

□抜け毛が多い、円形脱毛症、びまん性脱毛症がある

□爪の症状:白いスジや変形、割れやすい、炎症を起こしやすい

□治りにくい湿疹、皮膚炎

□口内炎を繰り返している

□味覚がおかしい、薄く感じる

□疲れやすい、風邪をひきやすい

B. 基礎疾患・生活習慣

□コーヒー、アルコールの過剰摂取

□長期にわたる偏食やダイエット

□糖尿病、肝疾患、腎臓病

□腸疾患を患っている

□胃切除後

□長期間継続している内服薬がある

検査と診断

亜鉛欠乏症の診断は、症状だけでなく血液検査による客観的な数値の確認が不可欠です。

当院で行う主な検査

① 血清亜鉛値の測定

一般的な欠乏症の診断指標となります。早朝空腹時の採血が望ましいとされます。

血清亜鉛値
(μg/dL)
正常域 80-130
潜在性亜鉛欠乏症 60-80未満
亜鉛欠乏症 60未満

② 血清ALPの測定

ALPは亜鉛依存性の酵素であり、血清亜鉛値よりも早く欠乏状態を反映することがあります。

検査費用(目安)

保険で3割負担の場合、初診料・再診料等を含め約3,000円~5,000円程度です。
(他の検査項目有無により変動)

診療の流れ


  1. 初回診察・問診:症状の確認、生活習慣や食事歴のヒアリング。
  2. 血液検査:亜鉛値、ALP値などを測定。(結果まで1週間程)
  3. 診断・治療開始:亜鉛製剤の処方と栄養指導を開始。
  4. 治療開始後1〜2ヶ月:薬の効果、副作用、症状の変化を確認するため再診。
  5. 治療開始後3〜6ヶ月:亜鉛値の安定を確認し、症状が改善していれば、薬の減量や終了を検討します。(脱毛などの改善には半年以上かかることがあります)

治療:薬物療法と食事指導

薬物療法:亜鉛補充療法

当院では、保険での治療を行っています。

検査の結果、潜在性亜鉛欠乏症の場合には、症状の程度に応じて内服の是非をご相談しましょう。
亜鉛が過剰になると、二次性貧血、白血球減少症、HDL低下を招くことがあるためです。

  • ノベルジン錠 (一般名: 酢酸亜鉛水和物): 主に用いられる亜鉛補充薬。吸収効率が高く、効果が期待できます。
  • プロマックD錠 (一般名: ポラプレジンク): 亜鉛を安定して供給する薬。胃潰瘍治療薬としても使われますが、亜鉛欠乏症にも応用されます。

薬物療法の価格(目安)

保険で3割負担の場合、1ヶ月あたり数百円〜1,500円程度です(薬の種類、用量、他の薬の有無により変動)。

食事療法

薬物療法と並行して、日常の食事から亜鉛を効率よく摂取するよう指導します。

亜鉛を多く含む主な食品

  • 牡蠣 (特に豊富)
  • 牛肉、豚レバー、卵黄
  • ナッツ類(カシューナッツなど)、種実類(かぼちゃの種など)

よくあるご質問

Q. 亜鉛不足による抜け毛(脱毛症)は、治療で完治しますか?

A. 亜鉛欠乏症が原因であれば改善が期待できます。ただし、髪の毛の成長には時間がかかるため、血中の亜鉛値が正常に戻った後も、効果を実感するまでに通常3~6ヶ月以上かかります。根気よく治療を続けることが大切です。

Q. 湿疹やアトピー性皮膚炎が治りにくいのは、亜鉛不足が原因ですか?

A. 可能性があります。亜鉛は、皮膚の再生とバリア機能の維持に不可欠です。亜鉛が欠乏すると、皮膚の傷や炎症が治りにくくなるほか、免疫のバランスが崩れてアレルギー反応が悪化し、アトピー性皮膚炎の難治化につながることがあります。当院では、標準的な皮膚炎治療と合わせて、亜鉛欠乏の検査治療も行っておりますので、根本的なアプローチが可能です。

Q. 亜鉛をサプリメントで摂取していますが、それでも検査は必要ですか?

A. はい、治療経験の多いクリニックでの検査を強く推奨します。
サプリメントは効果が不確実な上、過剰摂取のリスクがあるからです。適切な血液検査なしに亜鉛を摂取し続けると、銅欠乏症などの別の問題を引き起こす可能性があります。
医療機関で保険診療の亜鉛製剤を使い、血液中の亜鉛値を定期的に測定しながら治療することが、最も安全で効果的です。

Q. 爪の白い線や斑点も亜鉛不足のサインでしょうか?

A. はい。爪の白い斑点や線(白斑)は、爪が作られる過程で亜鉛が不足したことで生じる形成異常の一つです。爪は比較的血液検査の結果を反映しやすいため、亜鉛欠乏の分かりやすいサインとなります。治療が成功すれば、爪の根元から正常な爪が生えてきます。


監修:アレルギー専門医・皮膚科専門医
花田美穂


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