このページのポイント
- 高齢者に多い皮膚トラブルについて解説します。
- 治療は保険診療が中心です。必要に応じて外用・内服・処置を行います。
高齢者に多い皮膚疾患
1. 乾燥性皮膚炎(かゆみ・粉ふき)
加齢により皮膚のバリア機能が低下し、皮膚の乾燥が進みやすくなります。
冬季だけでなく一年を通してかゆみが出ることがあります。
- 主な症状:かゆみ、粉ふき、ひび割れ、皮膚の薄さによる出血。
- 家庭での対策:低刺激の保湿剤をこまめに塗る(入浴後すぐが効果的)、熱い湯を避ける、やさしい石けんの使用、室内湿度を保つ。
- 受診の目安:保湿で改善しない・強いかゆみがある場合。
2. 帯状疱疹(片側性の発疹)
帯状疱疹は年齢とともに発症率が高くなり、70代で特に増える傾向があります。
高齢者は合併症(帯状疱疹後神経痛:PHN)リスクが高いため、早期受診が重要です。
- 主な症状:皮膚に帯状の赤い皮疹、水疱、強い痛み、発疹は片側に集中。
- 治療:抗ウイルス薬(内服)が有効。
- 発症後できるだけ早く(48〜72時間以内が望ましい)受診すると、重症化やPHNを軽減しやすいです。
- 受診の目安:症状が出たら直ちに皮膚科専門医を受診。
3. 真菌感染(足白癬・爪白癬)
高齢者で足や爪の真菌感染が多く、爪が厚く変形したり、足の水疱や皮膚剥離、においの原因となります。
治療には外用・内服、爪のケアが必要です。
- 主な症状:爪の変色・肥厚・もろくなる、足の指間の皮むけ、かゆみ。
- 治療:爪白癬には内服薬が高い効果を示すケースが多く、外用との組合せで改善を図ります。
- 受診の目安:症状がでたら。他者に感染する可能性があります。
4. 慢性瘙痒(原因不明のかゆみ)
全身のかゆみを訴える高齢者が増えています。
- 対応:まず皮膚所見を確認し、必要に応じて血液検査や薬剤の見直し、内科連携を行います。
- 受診の目安:かゆみが夜間に強くなる・掻破により皮膚の損傷や感染を繰り返す場合。
5. 皮膚腫瘍(ほくろ・できもの)
高齢者では良性の増殖(脂漏性角化症=老人性いぼ)も多い一方、皮膚がんのリスクもゼロではありません。
自己判断せずに診察を受けることが推奨されます。
六浦皮ふ科では、
- ダーモスコピー(拡大鏡)で診断。
- 必要時は、生検の相談をします。
当院の治療方針(高齢者向け)
六浦皮ふ科では、高齢者特有の体の変化を考慮した診療を行います。
安全性を第一に、薬剤の副作用や飲み合わせにも配慮した処方を行います。
- 症状に応じた外用薬の選定・使用方法の指導(保湿・ステロイド外用の適正使用)。
- 帯状疱疹では、速やかな抗ウイルス内服+痛み対策(鎮痛薬や神経痛治療薬)。
- 爪白癬など真菌症には、内服治療や外来での爪処置を実施。
予防と日常ケアのポイント
- 保湿習慣の徹底
入浴後は速やかに保湿。セラミド含有等の低刺激保湿剤が推奨されます。
- 皮膚の清潔と爪のケア
足の指の間は乾燥させる、爪はこまめに整える(爪の変形がある場合は要受診)。
- 帯状疱疹の早期受診
片側性の皮疹・水疱があれば早めに受診。高齢者では合併症リスクが高いため迅速な治療が重要です。
- 日常の薬や既往歴の把握
薬剤でかゆみが出ることがあるので、常用薬は受診時にお持ちください。
よくあるご質問(FAQ)
- Q. 保湿剤はどれを選べば良いですか?
- A. 症状により選択が変わりますが、低刺激でセラミドやヒアルロン酸などが含まれるものがお勧めです。診察し適切な製剤をご提案します。
- Q. 帯状疱疹のワクチンは受けた方がよいですか?
- A. はい。帯状疱疹ワクチンは重症化を抑える効果があると報告されています。
- Q. 爪が厚くなっています。放置しても大丈夫?
- A. 放置すると二次感染や歩行障害の原因になり得ます。症状が進む前に受診して治療(内服や爪のケア)を受けることをお勧めします。
監修:皮膚科専門医 花田美穂